DX時代の社外役員の役割

ITに関して、社外役員や社外アドバイザーにもとめられる役割は何か。
顧問先でふと聞かれたことをきっかけに、しばらく考えていましたが、ある程度考えがまとまったものを少しずつ分けて
書こうと思います。ちなみにこの場合の社外アドバイザーですが、役割として、経営の監督までは行きませんが、経営者(社長)に対して助言(ときには厳しい)を行う顧問的な位置づけです。

社外役員とは

まず社外役員と呼ぶ時、会社法に記載がある社外取締役や社外監査役のことを指すのが(私の周辺では)一般的で、これらは、要件や設置義務については会社法に規定されています。会社法の社外役員設置の趣旨としては、少数株主を含む株主共通の利益を保護するため、客観的な立場から経営を監督することにあり、すなわち会社のガバナンス強化のための一つの構成と言えます。
一方、非上場会社であれば、社外(現在従業員でない)の人物に取締役や監査役になってもらった場合も社外役員と呼んでいるケースがあるかとは思います。この場合は、社外役員と言っても経営を監視するというよりも、経験を活かした助言が期待されて就任していると思います。
ただし、会社法ではいずれの場合にせよ、それ以上のこと(より具体的な役割)については記載がありません。

そこで、対象の会社の範囲はぐっと狭まりますが、上場会社に対して取引所が求めているコーポレートガバンスコードではどのように書いているかを見てみます。

コーポレートガバナンス・コードの基本原則4には以下のような取締役会等の責務が列記されています。
【取締役会等の責務】
上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、
会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、
(1) 企業戦略等の大きな方向性を示すこと
(2) 経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
(3) 独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと
をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。
ここでは取締役会等の責務ですので、社外取締役以外の取締役も含んだものとなっています。

経営と所有が一体化している非上場中小企業等においては、コーポレートガバナンスへの取組が上場会社とは異なりますので、全ては当てはまりませんが、基本的に取締役(幅広く捉えて、役員でない使用人の経営幹部も)の責務としては(1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと、(2)適切なリスクテイクができる環境整備、が経営実務上の必要からも求められていると思います。

ここで冒頭にかえって、ITに関して社外役員等(社外取締役でない取締役も当然に含んでですが)に求められる役割は、
(1)ITを活用した企業戦略等の大きな方向性を示すこと、(2)ITの活用において適切なリスクテイクができる環境整備 を促す・支援することにあると言っても良いのではと思います。

コーポレートガバナンスとITガバナンス

コーポレートガバナンスに似たITの分野の言葉として、ITガバナンスがあります。
経産省のシステム管理基準によれば
「IT ガバナンスとは経営陣がステークホルダのニーズに基づき、組織の価値を高めるために実践する行動であり、情報システムのあるべき姿を示す情報システム戦略の策定及び実現に必要となる組織能力である。」
と定義されています。
したがって、このシステム管理基準の言葉を借りれば、情報システム戦略の策定が(1)ITを活用した企業戦略等の大きな方向性を示すことになり、情報システム戦略の実現に必要となる組織の整備・能力の維持が(2)ITの活用において適切なリスクテイクができる環境整備ということになります。

このあたりが、DX時代の社外役員の役割として加味されると考えています。